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私がマカーになったわけ(3): Macintosh Ⅱci

 Ⅱciを買ったのは、私が医者になったということと深くかかわっている。

 当時私は冨士森形成外科に勤務していて、症例写真をもとに学会発表スライドを作ったり、発表用ポスターを作ったりする機会が度々あった。その頃の学会スライドといえば、ワープロで印刷した(あるいは場合によっては手書きの)白黒の文書を「スライド屋さん」に持っていって青焼きしてもらう「ブルースライド」と、マクロ付1眼レフ(もちろんアナログの銀塩)カメラで撮った35ミリのカラーリバーサルスライドを順番に束ねたものが主流だった。

 つまりほとんどの発表演題が、ブルーバックに白抜き文字の題字で始まり、同様の説明スライドが数枚あって、カラーの症例スライドが何枚か(「これが術前です」「こちらが術後1ヶ月です」なんていう解説付きで)続き、最後にまた青地に白のまとめ、という形式になっているわけだ。

 ところが国際学会などでは(あるいは海外からの招待講演にくる著明なプロフェッサーの場合は)きれいなバックグラウンドカラーに華麗な色つき文字、説明の文字や矢印が入った写真など、何らかの画像加工をしたスライドでかっこいい発表をするドクターが増えつつあった。

 大学などに所属してそれなりの予算を付けてもらえるのなら、そうした加工をプロのスライド屋さんに依頼することもできるのだが、個人でそうしたことをやろうと思うと、当時は非常に大変だった。そうしたことが個人レベルでかっこよくできる手段として、わたしが目を付けたのがPhotoshopという画像編集ソフトであり、そのソフトが使えるコンピュータがMacだったわけだ。

 Macがグラフィックに強いのは医療界では有名で、医者仲間ではMacが普及しつつあったが、まだ個人で買うには高価で、大学や病院の医局などで購入するケースが多かった。なにしろ、スライドを作ろうと思えば本体だけでは話にならず、20万円以上するPhotoshopなどの画像ソフトが必須であるのに加えて35ミリスライドやレントゲンフィルムなどを読み込める透過型スキャナ、35ミリのカラーリバーサルフィルムに画像を直接記録するフィルムレコーダーなど、一つ一つの機器が中古車1台買えてしまう値段なのである。(ソフトについてはINHが研究者向けに無償で配布しているImageソフトが入手可能だったが)

 私は130万円以上のローンを組んで、何とかⅡciの本体と13インチモニタ、35ミリスライド専用のフィルムスキャナ(当時としてはかなりハイレベルの1850dpi)といくつかの画像ソフト、録音用機器とサウンド編集ソフトなどを手に入れたが、残念なことに作った画像を記録するフィルムレコーダーまでは手が出なかった。

 画像をフィルムに記録するのに最適なのは、当然4000dpiの高解像度で記録できるフィルムレコーダーなのだが、その廉価版として、写楽(たしかこんな名前)という機械がそのころ発売されたように思う。何のことはない、機械に内蔵された小型の高解像度モニタに画像を映し出し、それをこれも内蔵されたアナログカメラで写真に撮るといういかにもな構造である。それでも結構高くて30万円近かったように記憶している。

 それならばというので、真っ暗にした室内で13インチカラーモニタに映し出した画像を、向かい合わせに置いた1眼レフカメラで撮影してみたりしたのも懐かしい思い出だ。(さすがにこの方法では、大きな会場に投影するレベルの解像度は得られなかった)

 結局のところ、フォトショップを使ってかっこいいスライド、という試みは、画像を作るところまではいいのだが、出力の段階でプロのお世話にならざるを得ないという少々不本意な結果となった。当時のスライド出力サービスは、Mac専門の出力センターでスライド1枚2000円ぐらいかかり、駆け出しの身には少々つらい出費であった。

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