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耳の形成外科: 小耳症の手術(1)

最初に小耳症の手術に入ったのは、研修医1年目、京大の形成外科に所属していた頃のことでした。執刀医は一色先生で、耳つくりに使う肋軟骨の採取を、伊波先生(現:クリニカいなみ)と一緒にやらせてもらったように記憶しています。

京大形成外科は、昭和52年に当時二つに分かれていた「耳鼻科形成」と「皮膚科形成」が一緒になって誕生した教室で、初代教授は耳鼻科出身の一色先生(現:一色クリニック)でしたから、当然耳や鼻の手術を受ける患者さんが非常に多く、当時の西日本の小耳症の患者さんの大部分が京大に集まってきたのではないかと思えるほど、耳の手術は次から次にありました。

小耳症とはご存知の方も多いと思いますが、片方の耳が極端に小さい状態を言います。場合によっては痕跡的で耳の穴もないような重症な患者さんもいます。一色先生の耳作りは当時から有名でしたが、その特徴を一言で言えば、肋軟骨から作る耳のフレームが簡素なことではないでしょうか。

それは、言葉を換えれば、採取する肋軟骨の量が少なくて済み、手術時間も短く、患者さんへの侵襲が小さいということでもあるように思います。現在はより多くの軟骨を取れるだけとって、組み合わせて細かい部分まで作りこんだ軟骨フレームがはやっているようですが、それに要する時間や患者さんへの負担を考えると、どちらがよいかはなかなか難しい問題だと思います。

肋軟骨を採取してフレームを作るには、耳の大きさがある程度大人に近づき、軟骨がまだ大人の様には固くなっていない、若い患者さんが最適なのですが、その時期のお子さんは非常にセンシティブでもあり、耳のためにどの程度体のほかの部分に負担をかけるかについては、単に手術のしやすさだけでなく、精神的な要素やその患者さんの生活歴なども考える必要があります。

それを考えると、今では廃れてしまった、シリコンの耳、というのも、体のほかの部分に傷を付けずに済むという点では、本当はなかなか捨てがたい優れた方法であるように思います。ただ、シリコンに限らず人工物は、何年たっても結局人体にとっては異物であり、何か事故があれば感染を起こして取り出さなければならない、という欠点を抱えています。

では、なぜ鼻に関してはシリコンが生き残り、多くの美容外科で今も使われているのでしょうか。
鼻に使われるプロテーゼは、形が非常にシンプルです。この辺に、耳のフレームをシリコンで作る際の工夫の余地がありそうに思います。それはまた、一色先生のシンプルな軟骨フレームのよさを見直すことともかかわってくるようにも思えます。

現在は、大江橋クリニックでは軟骨フレームの作成を行う小耳症の初回手術は行っていませんが、耳の手術にかかわりを持つ医師としては、この分野でももっと技術が進むといいなあ、と常に関心を持っています。

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