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耳の形成外科(5): 耳介血腫と耳介偽嚢腫

事故やスポーツなどで耳を打撲すると、耳の軟骨の中に出血し、血が溜まって耳が変形してくることがあります。時には特にそれといった怪我の記憶がなくても、ごく軽い刺激で起こることもあるようです。

この段階であれば、溜まった血を抜き、耳を圧迫していれば元に戻ることがありますが、圧迫の期間が短かったり不適切な処置を受けていたりすると、変形が固定化してきます。
圧迫してくっつくことが期待できるのは、出血が始まってせいぜい数日の間で、その間に何もしないと出血は止まったとしても空洞の中に様々な細胞が遊走してきて袋を作り、黄色く透明なリンパ液が溜まる「偽嚢腫」に変わって行きます。

また、繰り返す出血により内部に溜まった血液が「基質化」して軟骨状になり、いわゆる柔道耳になってしまうこともあります。(柔道耳については別に書きます)

耳介軟骨は、1枚の板でできているように思えますが、実際には出血するのは表と裏の2枚の軟骨の間です。ちょうどサンドイッチの2枚のパンの間にたっぷり具を挟んだように膨らみ、内部に溜まった液体の圧力で更に広範囲まで剥がれて広がります。ですから、血を抜いたらすぐに表と裏の両側から2枚の軟骨を挟みこんで密着するようにくっつけておかないと、いつまでたっても軟骨は1枚に戻りません。通常は「ボルスター固定」といって、綿花やスポンジなどを両面から縫い付けてキルティングします。固定期間は最低でも2週間は必要で、通常の抜糸のつもりで1週間で縫いつけた糸を切ってしまうと、また再発することもあります。

「耳鼻科にいったら、しばらく強くつまんで圧迫しろといわれた」などという患者さんに出会ったことがありますが、いくらなんでも2週間指でつまんでいるのは不可能ですから、そのお医者さんは事の重大さをご存じなかったのだろうと思います。

時機を失した場合や出血が続く場合は、切開手術が必要となります。目立たないように耳の縁から切開し、まず2枚の軟骨をきれいに剥がします。出血点が見つかれば電気メスなどで丁寧に止血します。通常、そのまま2枚を合わせてもくっつかないので、両方の軟骨表面を軽く傷つけて癒着させるようにしますが、うまくいかない場合には表側の半分を切除してしまうこともあります。軟骨はやや薄くなりますが、耳が変形することはありません。

これはすでに内張りの袋ができて「偽嚢腫」となった場合も同じです。偽嚢腫の場合は袋の組織を完全に取り除かないと再発しやすいので、軟骨の切除を考えたほうが確実かもしれません。いずれも、ボルスター固定を行い完全にくっつくまで糸を外さないようにします。

変形が固定化していない場合は、この手術で完全に耳の形は元に戻ります。傷痕もまず見た目にはわかりません。放置せずにできるだけ早く処置を受けることが大切です。

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