« 大江橋クリニックのウェブサイト(9) | トップページ | 音楽と美容の共通点(2)楽器の寿命について »

音楽と美容の共通点(1)古楽器の手入れ

 少し趣を変えて、しばらく音楽や芸術について考えてみたい。美容に対する考え方との共通点のようなものが感じ取っていただければ幸いである。

 学生時代のことだから、ン十年前になるのだが、ルネサンス時代の音楽に興味を持ち、リコーダーを習っていたことがある。趣味も嵩じてくると「良い楽器=ホンモノ」が欲しくなるわけで、YAMAHAではなくて(いや、YAMAHAのリコーダーも実は大変優れた楽器だが)ヨーロッパで作られた木製の笛が欲しくなった。しかし「ホンモノ」は高いのである。そこへ妹の友人である山城譲氏(現在はチャカバッティオカリナ四重奏団で活躍中)から、オランダで30万円で買ったけど使わなくなった楽器があるから18万円で譲ってもいい、という話があって私はそれを譲り受けることにした。
(その辺の細かな経緯とか楽器の詳細とか書きたいことは沢山あるが、今回のテーマからは外れるので省く)

 で、木の笛である。
 楽器をよく知る友人や先生からくれぐれも言われたことは、楽器は時間をかけて徐々に吹き慣らし、日々の手入れをきちんと行うことによって「良い楽器」に成長していくのであって、上手な吹き手が持てば良い楽器になり、いい加減に扱えばダメな楽器になってしまうということであった。

 嬉しがっていきなり何時間も練習してはいけない、変形したりひび割れて二度と使えなくなってしまう。
 初日は3~5分から初めて、徐々に息を吹き込む時間を増やしていくこと、中音域からはじめて徐々に強い音にしていき、十分に良く響くようになってから音域を広げていくこと。使い終われば分解して柔らかい布で水分を拭き取り、箱に収めてもすぐに蓋を閉めずにしばらく休ませること、楽器を裸のままいきなり戸外に持ち出さないこと、週に一度くらいは亜麻仁油に浸して(オイルバス)その後丁寧に油分を拭き取ること。
 するべきことはたくさんあった。

 当時の私はまだ若く、そうした日々の扱いが楽器を大切にしその性能を十二分に発揮させることだとは理解できたが、良い楽器がそれほどまでにデリケートなのだということについては半信半疑であった。特に、演奏者が良い音を長く響かせているうちに、楽器そのものが良い音に育っていくという点については、なかなか理論的に理解できず、それは愛着とか楽器をいとおしむ心とかいった精神的な部分が演奏者の「音楽する心」に影響を与えるせいではないかと疑っていた。つまり、演奏者が「良い楽器だ」と思い込んで演奏することによって、より細やかでデリケートな部分まで心のこもった、楽器の性能を生かしきった演奏になるのではないかと思っていたのだ。

|

« 大江橋クリニックのウェブサイト(9) | トップページ | 音楽と美容の共通点(2)楽器の寿命について »

「音楽」カテゴリの記事